Statement

ジュエリーを作り始めた頃、物作りは自己表現の手段で、それがすべてだった気がします。「自分にどんなものが作れるのか」「何かを作り出してみたい」いつもそれを考え続けていました。しかし、ジュエリー制作の経験を積み、それらをいろいろな形で発表していくうちに、そういった考え方だけでは自分が理想とする物作りは出来ない、と感じるようになりました。
当たり前のことですが、ジュエリーは着けてくれる人の手元に渡ったときからその人の個人的なものになります。私は所有者とジュエリーの個人的な関係こそがジュエリーの持つ本来の価値だと考えています。 例えば、人がどんな理由でジュエリーを手に入れたか、ジュエリーに何を感じるか、ということがとても重要で、スペックやデザインコンセプトはジュエリーの価値のほんの一部でしかないのです。どんなに優れたイマジネーションを、その体得した高度なスキルを駆使して形にしたとしても、着ける人に対する真摯な姿勢が備わっていなければ、血の通った良いものは生まれません。 自分自身が素晴らしいと思う提案が誰かの心に響き、私の作ったジュエリーが大切なもののひとつに選んでもらえれば大変うれしいです。

和田泰直